面積の雑談

われらがwiki大先生にきくと『面積(めんせき)とは、平面内の、あるいは曲面内の図形の大きさ、広さ、の量である。』ですって. あーよかったじゃあ今日の話はこれで終わり!

と, いうわけにはいかないわけですが, 実際面積(及び体積)って結局のところ数学的にバシっと決めることができるんでしょうかね? まぁ出来なきゃ困るんですけど, どうやって面積って定義するんでしょうかね? 今日はそんな雑談です.

そもそも私達が面積の求め方を一番わかってる図形といえば, まあ人それぞれあるかもしれませんが大体は長方形とかなんじゃないですかね? 縦×横, たったそれだけ. まぁなんで縦×横かってのはようは一辺が1の正方形の面積を1と決めてそれが何個敷き詰められるかで面積を決めてるわけだからなんですが.

それでですね, 昔の人はこの長方形の面積を利用して例えば平行四辺形は平行移動したら長方形になるから底辺×高さだとか, 三角形は二つくっつけたら平行四辺形だから底辺×高さ÷2だとか, 正多角形は三角形敷き詰めただけだから面積求められるとかやってたわけですね.

ただまぁ, それもやっぱり限界があるわけで, 今までのような方法で面積が求められない図形が出てきてしまうわけです. それが円ってやつなんですが, 皆さんはどうやって求めるか知ってますよね. \(\pi r^2\)もちろん\(\pi\)は円周率で\(r\)は円の半径です. これもまぁ昔の人たちの努力の結晶なわけで, 私達がこの公式を気軽に使えるのも先人たちのおかげってわけですね. ユークリッドの原論には取り尽くし法という方法でここまではたどり着いてはいませんが, 直径の2乗に円の面積は比例するという部分までたどり着いています. 取り尽くし法とはなんぞや?という感じですが、これが敷き詰めるという発想の応用で 要は面積の求められる図形がどのくらい入るんだろう?という近似の発想に至ります. この近似って意外と大事で, 面積や体積の話もそうですが, 解析学という学問の基本的な考え方のひとつにもなってます.

ようするに, 正確に面積測る方法がないなら面積が測れるやつをいっぱい並べればいいじゃんってことですね. 後にこの方法でアルキメデスがよく知られる円の面積の公式を出しました. アルキメデスぱねぇ、まじエウレーカって感じっすね.

さてここまでは面積および体積をどうやって求めるかなんて話だったわけですが, いよいよそのあたりが煮詰まってくると今度は数学はこんな疑問に到達します.

『結局どんな図形だったら面積って測れるの?』

ここにひとつアイデアを与えたのは積分です. 正確にはリーマン積分ですね. リーマン積分は簡単に言えば関数が作るグラフによって出来る図形を縦切りの長方形に分割してその極限を面積としようというものです. ただし当然長方形の分割の仕方は一般には山ほどあるのでその値が分割の仕方で変わっては困るわけで, その値が分割によらないときリーマン積分できるとしましょうという制約はつきます. このリーマン積分は今までのような平面図形および立体図形の体積はすべて求めることができ, さらにより複雑な図形の面積や体積を求めることを可能にしました. そこで図形\(D\)(より正確に言うなら\(\mathbb{R}^n\)の領域)に対して, \(I_D(x)=1\quad (x\in D), I_D(x)=0\quad (x\notin D)\)という関数が積分できるならその図形は可測, つまり面積が測れると定義しましょうとしたわけです. この意味の可測をジョルダン可測といって, その積分の値を面積, あるいは体積といいます.こうして一つのものさし的なものができたわけです.

当然のことではありますが, 例えば円だとかそういった我々が昔から知っているような図形はこの意味で可測でその面積や体積は従来のものと一致します.

じゃあいいではないかと思ってしまいますが, リーマン積分を利用していくうちにその不便さが問題となってきます(とは言っても値は求めやすい方ですから今でも使われていますが).

その原因はなにか?というと定義域の区間を分割したことです. もっとわかりやすく言うと測る図形を縦に切ったことがその原因でした. そこでルベーグは縦切りじゃなくて横切りだったらいいんじゃね?という発想に行き着きます.

ですが, 横切りにしたらしたでそれも一つ大きな問題があります. それは結局横切りした図形を一旦定義域のほうに戻してその戻した図形の面積を測らなければいけないのですが, それが長方形とは限らないんですね.

つまり, 引き戻してきた図形が可測じゃなきゃ困るわけですが, 従来の可測の概念では足りなかったわけです.

そこで, ルベーグは面積のもつ性質を抽出してもう一度ものさしを作り直すことをしました. そうしてできたのが測度ってやつです. 特にルベーグのつくった測度をルベーグ測度といって, この測度からつくった積分ルベーグ積分というわけです.

とまぁ僕が知ってることはこれくらいですが, 面積の定義をバシっときめるって話はどこに行ったんでしょうね. とりあえず話したいことは話したので今回はこれで終わりにします.

解析学とかいう分野

久しぶりにブログを書こうと思うのですが, どうにも書く事がなかったので解析についてダラダラ話そうかなと思います.

考えてみれば大学に入って初めに出会う数学として解析学があるんですね. 微分積分というやつです. そもそも解析学という分野が始まったのはこの微分積分が発端でした.

大学の微分積分で最初に頭を抱えるであろうε-δ, あるいはε-N論法がありますが, こいつらには僕も頭を何度抱えたかわかりません. 僕が思うにこの定義でつまづくのは言ってることとやってることが噛み合ってないからなのかなーと思います.

まぁ一応定義を確認しておくと次のような感じです.

 

数列の極限数列\(\{a_n\}\)がある実数\(\alpha\)に収束するとは\[\forall\varepsilon>0,\ \exists N\in\mathbb{N};\ n\geq N\Rightarrow |a_n-\alpha|<\varepsilon\]が成り立つことである.

 

数列の極限の定義はこんな感じなのですが, これが成り立つとき\(n\)を限りなく大きくしたとき\(\alpha\)に限りなく近づくって表現をするですが, これをそのまま定義にしてしまうとアキレスの亀的なことを言われてしまうわけです.

つまりどういうことかというと, \(n\)を大きくしたらその値との誤差が小さくなるだろうというと,でも一生その値とは一致しないじゃないかと言われてしまうわけです.

なので先にもう誤差を決めてしまうんです.誤差を決めてしまってしまえば\(n\)をでっかくとればほら誤差の範囲に収まるだろうと言えて文句を言われないわけですね.でもやってることと言ってることが逆なのでどうも直感的理解が難しいのではないかなというのが個人的な意見です.

まぁこんなようなややこしい定義ではありますが, この極限を扱う学問が解析学といわれるものです.これがないと解析とは言えないのです.

そんな解析学ですが, 解析で重要なのは極限の定義にも登場する不等式です.解析学は不等式の学問といっても差し支えないかもしれません.一冊不等式の話だけがまとまった本もあるくらいです.

解析学ではいろんな不等式を使いますが, 僕たち解析学の舞台設定で最も重要なのは三角不等式です.それは次の定義を見てもらえればわかります.

数列の極限\(V\)をベクトル空間とする.このとき, \(\|\cdot\|\colon V\to\mathbb{R}\)がノルムであるとは, 以下を満たすことである:
    \((1)\ \|x\|\geq 0\)かつ, \(\|x\|=0\Rightarrow x=0\)
    \((2)\ \|\alpha x\|=|\alpha|\|x\|\quad (\alpha\in\mathbb{C})\)
    \((3)\ \|x+y\|\leq\|x\|+\|y\|\quad \)(三角不等式)
ノルムが定義されるようなベクトル空間をノルムベクトル空間という.

 

と、このようにノルムとは絶対値の一般化なのですが,その定義の中に三角不等式が入ってるわけです.微分積分学では大抵実数値での収束で終わるわけですが, 一般の解析ではこのようにノルムが定義された空間でそのノルムについての極限を操り議論していくのです.

と具体的な話は全く出来てませんが取り合えず今回は終わります.気力があればもうちょっと難しいことしたいです.

数学雑談:微積の復習はじめました.

 ブログ作ったはいいがすっかり存在を忘れていました.なんか特に話すこともなかったので最近始めた微積の復習の話でもしようと思います.

 こんなタイトルですが,1,2年真面目に勉強やっとけよとか今のうちに復習しとけよとか説教臭い話はするつもりはないです.微分積分の復習って今やると意外と面白いなぁって話です.

 まぁ流石に僕のゼミとかの内容上\(\varepsilon-N\)とかそのへんから復習とかはしていないですが,うちの大学で言う微分積分ⅡとⅢは全くと言っていいほど理解してなかったので,思い立ったが吉日,初めてみました

 微分積分Ⅱの内容で特に曖昧だったのが,陰関数定理と逆関数定理でした.どちらも証明が大変だったことは覚えているのですが,それ以外は全く覚えてませんでした.これら二つの定理は兄弟というか表裏一体というかといった感じで,どちらかを気合で証明すると,どちらかはその系として出てくるという関係性が面白い定理ですね.それぞれの主張は次のようになります:

陰関数定理(若干ごまかしver)\(U\)を\(\mathbb{R}^{n+m}=\mathbb{R}^n\times\mathbb{R}^m\)の開集合とし,写像\(F\colon U\to \mathbb{R}^n\}\)を\(C^r\)級写像とする.\(U\)の点\(p=(a,\ b)\)に対して,\(F(p)=0\)かつ,\(n\)次正方行列\[\frac{\partial(F_1,\cdots ,F_m)}{\partial(y_1,\cdots y_m)}=\left(\frac{\partial F_i}{\partial y_j}\right)_{i,\ j=1,\cdots n}\]の点\(p\)においての行列式が\(0\)でないならば,\(p\in V\times W\subset U\)なる\(V\in\mathcal{O}(\mathbb{R}^n)\)と\(W\in \mathcal{O}(\mathbb{R}^m)\)と\(C^r\)級写像\(g\colon V\to W\)が存在して\(F(x,\ g(x))=0\ (x\in V)\)かつ\(g(a)=b\)を満たす.

 

逆関数定理\(U\in\mathcal{O}(\mathbb{R}^n)\)とし,\(F\colon U\to\mathbb{R}^n\)を\(C^r\)級写像とする.今\(p\in U\)で\(F\)のヤコビアン\[JF=\det\left(\frac{\partial F_i}{\partial x_j}\right)_{i,\ j=1,\cdots n}\]が\(0\)でないならば\(p\ U,\ F(p)\in V\)なる\(U,\ V\in\mathcal{O}(\mathbb{R}^n)\)が存在して\(F\)の\(U\)上の制限\(F|U\colon U\to V\)は\(C^r\)級微分同相写像であり,ヤコビ行列は\(dF^{-1}=(dF)^{-1}\)を満たす.

 

陰関数定理を若干ごまかしverと書いたのは\(g\)が満たす関係式がもう一つあるからです.まぁ書くのめんどくさいのでゆるして()

陰関数定理から示す場合,まず\(F\)が\(\mathbb{R}^{n+1}\)上の実数値関数であるときに示します.これは上の主張でいうところの\(m=1\)にあたります.これを示すと,上の定理は\(m\)についての帰納法により示すことができます.ですが大抵は二変数実数値関数のときのみ示すのが微積では普通ですね.ていうか微分積分ではこのあとにあるラグランジュの未定乗数法を示すためだけに出すことが多いです.

 では上の形をやってもあまり意味がないのかというと、まぁ微分積分でこの形を使うことはおそらくないと思いますが多様体を学ぶときにこの形を知っていると,多様体逆関数定理と陰関数定理は楽ができます.そして陰関数定理(正確にはそれにより従う埋込み定理)は多様体製造機となります.

 多様体であることをまともに示そうとするとくっそだるいので,埋込み定理は一つ多様体を構成する楽な方法の一つとして有用です.(幾何弱者並の感想)

 なんか何の話したいのかよくわかんなくなってきたのでこの辺で終わります.()

数学雑談:記述のあれこれの好みとか

 作ったはいいが忘れそうなので定期的に書こうと思うけどとく書く事がないので今回は本当の意味で雑談です.

 数学の記述っていろんな言い回しがあって僕は結構数学書とか読んでるときそのへんも好きで読んでたりします.

 例えば「~である.実際」論法と私は読んでいるのですが、結論を先に書いて、そのあと実際に成り立つことを書くという書き方です.これ書いてあるだけで数学に強い感でてませんか!?(オタク特有の早口)この数強だけに許された書き口は愚かだと思いつつも僕も使ってしまいます.心は常に数強でありたい.

 しかし、僕的にこの「~である.実際」論法よりもさらに強い表現があります.それは「~である.なんとなれば」論法です.「このなんとなれば」という格式高い言い回し大変素晴らしいです.最近の新しい本ではあまりこの言い回しはないのですが、少し古い本には結構あって年代の重みも感じられてとても好きです.共立の復刊シリーズなんかは古いので言い回しとしては結構あったと思います.

 それと昔の言い回しで僕が好きなのは、例えば普通「~となるような・・・が存在する」的な言い回しをすると思うんですが、それが「~なるが如く・・・が存在する.なんとなれば~とすればよい」とか書いてあるんですよ.なるが如く!かっこいい!(語彙消滅)からのなんとなれば~ですよ!いやー古い数学書好きです.

 英語で書くのも好きですが、日本語独特の表現も厨二心をくすぐられます.僕は国語はあまりすきじゃなかったですが,かっこつけたがりなのでこう言う言葉を探しては自分の勉強ノートにこっそり使ってたりしています.このようにして気分だけでも数強になって僕は数学をエンジョイしております.で、最後になんか適当に証明して終わります.(オチなし)

中間値の定理有界区間\(I=[a,\ b]\)上の連続関数\(f\)が\(f(a)<f(b)\)を満たすとする.この時\(f(a)<\gamma<f(b)\)なる任意の\(\gamma\)に対し,\(f(c)=\gamma\)なるが如く\(a\)と\(b\)の間の点\(c\)が存在する.

 

証明

\(\gamma=0\)の場合を示せば十分である.(\(f(x)\)を\(f(x)-\gamma\)と置き換えよ.)今,集合\(A\)を次のように定める:\[A=\{x\in I;\ f(x)<0\}\]

このとき,\(A\neq\emptyset\)であることに注意せよ.これは\(a\in A\)であることから直ちにわかる.

また,\(b\)は明らかに\(A\)の上界である.故に,\(c=\sup A\)が存在する.以下これが主張を満たすことを示す.

まず\(f(c)\leq 0\)が成り立つ.なんとなれば,\(f(c)>0\)とせよ.このとき,\(f\)は連続であるゆえ,\(\mid x-c\mid<\delta \)なる任意の\(x\in I\)に対し,\[ \mid f(x)-f(c)\mid <\frac{f(c)}{2}\]となるが如く\(\delta>0\)が存在する.このとき特に,\(d=\max \{a+c/2,\ c-\delta/2\}\)とすれば,\(f(d)>0\)である.これは,\(c>x\)なる任意の\(x\)は\(f(x)<0\)となることに反する.故に,\(f(c)\leq 0\)である.

従って,\(f(c)\geq 0\)が示されれば結論が得られる.今,\(f(c)<0\)とせよ.このとき上と同様にして,\(\mid x-c\mid <\delta'\)なる任意の\(x\in I\)に対し,\[\mid f(x)-f(c)\mid<-\frac{f(c)}{2}\]となるが如く\(\delta'>0\)が存在する.すなわちこの時特に\(d'=\min\{b+c/2,\ c+\delta/2\}\)とすれば,\(f(d')<f(c)/2<0\)となり,これは\(c\)が\(A\)の上限であることに矛盾する.故に\(f(c)\geq 0\)である.

以上より,\(f(c)=\gamma\) \(\Box\)

商集合とかいう初見殺し集合

 調子よく2回目の記事を書いてみたのですが、商集合って初見全然わかんなかったなということを思い出したので多分理解しているであろう今の僕が頑張って説明していこうと思います.

 そもそも商集合の前にいろいろと言葉の定義があるのでそのへんを少し話してから本題に入るとします.

Def\(A,\ B\)を集合とする.この時集合\((a,\ b)\)を\[(a,\ b)=\{\{a\},\ \{a,\ b\}\}\]で定義し,これを\(a,\ b\)の順序対という.これに対して,\[A\times B=\{(a,\ b);\ a\in A,\ b\in B\}\]を\(A\)と\(B\)の直積集合という.また,\(R\subset A\times B\)となるとき\(R\)を\(A\)と\(B\)の関係(または対応)という.

 

 相変わらず堅苦しいですが,まずは順序対とか直積集合からです.順序対に関しては私達がよく使う座標の一般化だと思ってくれていいです.なので当然\[a\neq b\Rightarrow (a,\ b)\neq (b,\ a)\]が成り立ちます.なんで順序対という名前かというとそれはそのまま順序を考慮した対だからですね.もちろん\[(a,\ b)=(c,\ d)\Rightarrow a=c,\ b=d\]も成り立ちます.暇があったらチェックしてみてください

 さてさて、そんな順序対を集めて作ったのが直積集合というやつです.直積集合はみなさん使ってる\(\mathbb{R}^2\)なんかもそうですね.そんな直積集合の部分集合を関係というんです.だから例えば\(A=B=\mathbb{R}\)としたときの\[\{(x,\ y);\ x^2+y^2=1\},\ \{(x,\ y);\ y=2x+1\}\]なんかは関係ですね.これは定義から円と直線だということがわかると思います.特に2番目のように\(x\)についてただひとつ\(y\)が決まってるような関係を写像といったのは前の記事の通りです.

 順序対ってわざわざ定義する必要ある?って僕も初見思いましたが数学はこういう細かいところにもきちんと口を出していかないとダメなのでこの辺は今までの座標みたいに考えてもいいけどきちんと定義があるってことを知っておきましょう.

 次に上の関係についてもう少し考えてみましょう.まずは定義です.

Def\(A,\ B\)を集合とする.\(A\)上の関係,すなわち\(R\subset A\times A\)が任意の\(x,\ y,\ z\in A\)に対して次の3条件を満たすとき\(A\)上の同値関係といい,\((x,\ y)\in R\)なるとき,\(x\sim y,\ xRy\)などと書く.:
    \((1)\ x\sim x\)すなわち,\((x,\ x)\in R\) (反射律)
    \((2)\ x\sim y\Rightarrow y\sim x\)すなわち,\((x,\ y)\in R\Rightarrow (y,\ x)\in R\) (対称律)
    \((3)\ x\sim y,\ y\sim z\Rightarrow x\sim z\)すなわち,\((x,\ y),\ (y,\ z)\in R\Rightarrow (x,\ z)\in R\) (推移律)

 

 これが所謂同値関係というやつです.文字で書くとわかりづらいですがこれは\(=\)をリスペクトしているので、その性質を抽出した結果上の3つが残ったということです.だから同じものは当然イコールだし,左辺と右辺を入れ替えても同じ意味だし,\(a=b,\ b=c\)だったらそりゃ\(a=c\)だろというすごく真っ当なことを言っています.おそらくわかりづらくしている原因は集合論の言葉が直感を排除した言葉なので改めて当たり前のことを集合論の言葉で書くとかえってわかりづらいのだと思います.

--余談--

上で見てきたように関係というのは直積集合の部分集合です.なので「関係を\(x\sim y\Leftrightarrow (\star)\)を満たすとすると・・」なんて書かれることが多いので逆に戸惑ってしまうかもしれないですね.でもこれは\(x\sim y\Leftrightarrow (x,\ y)\in R\)なのですから結局のところ集合\(R\)を\[R=\{(x,\ y);\ (\star)を満たす\}\]と定義してるのと同じです.まぁだから言ってることはそんなに変わらないんです.だから気軽に\(\sim\)を関係と言い切っても別に問題がないんですね.

--End of 余談--

 同値関係が定義されたとき同値類、そして商集合を定義することができます.

Def\(A\)を集合として,\(A\)上の同値関係\(R\)があるとする.このとき,\(a\in A\)に対して,\[[a]_R=\{x\in A;\ a\sim x\}\]と定義し,\([a]\)を\(a\)の同値類といい,\(a\)を代表元という.また,\[A/R=\{[a]_R;\ a\in A\}\]を,\(A\)の\(R\)に関する商集合という.また同値関係を\(\sim\)で書くときは\(A/\sim\)と表すこともある.

 

--Remark--

\(a\sim b\Leftrightarrow [a]=[b]\)が成り立ちます.

実際,\(\Rightarrow \)は\(x\in [a]\Leftrightarrow a\sim x\Leftrightarrow b\sim x\Leftrightarrow x\in [b]\)となるのでOKです.

逆は\(b\in [a]\)なのですぐ分かります.

--End of Remark--

 数学って基本的に大事なこと以外には特別名前をつけたりしないので商集合って大事なんですが,商集合の何がいいかっていうと考えたい事以外を排除できるんです.これはどういうことかっていうと,例えば\(3\)で割ったあまりにだけ興味があるときとかに,それ以外の違いってどうでもいいんですよね.だから\(3\)とか\(19\)とかって違う数字だけど\(3\)で割ってしまえばあまりが\(1\)なのでこいつらにあまりの上での違いってないわけです.だからこういう時に商集合であまりが同じものは全部ひとつにまとめてしまえば,考えるのはあまりが\(0,\ 1,\ 2\)の三種類しか考える必要がなくなるのでだいぶ楽になります.

 まぁそんなこんなでここまで話してきたんですが、そうは言っても商集合なんてどこで使うんだよってのが本音かもしれません.でもぼくらは昔から考えてなかっただけでこの考え方には触れてる部分があります.

 それは分数です.分数ってよくよく考えてみると\[\frac{1}{2}=\frac{2}{4}=\frac{3}{6}=\cdots\]みたいに同じものがまとまってる感じがしませんか?(してほしい)そういう目線で見てみると整数のペア(より正確には順序対)\((1,\ 2)\)と\((2,\ 4)\)は同じもの・・・つまり同一視されているわけですが,こいつらにどういう関係があるかというと,分母を払った形\[1\times 4=2\times 2\]が成り立ってますね.これは勿論\(1/2\)と同じになるものすべてこれと同じ関係になっています.

 そこで,\(\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}\)上の関係\(\sim\)を次のように定めます:\[(n,\ m)\sim (k,\ l)\Leftrightarrow nl=mk\]このようにすると、これは同値関係になります.(チェックは定義通り三つの条件がなりたてばよいです.)さてこれをもってして,改めて有理数の集合というのを\[\mathbb{Q}=\mathbb{Z}/\sim\]と定義することができるのです.分数の正体はなんと同値類だったわけですね.

 ということで有理数全体が商集合だったというところで今回は終わります.実は有理数だけじゃなくて整数も自然数の直積集合を同値関係で割った商集合です.これも考えてみると意外と面白いかもしれませんね.じゃあ実数はっていうと実数はもうちょっと話がややこしくなります.まぁそのへんは数理図書館へレッツゴー!ってことで適当にごまかしてこの辺で今日は筆をおくことにします.

写像とかいう超基本的な数学の概念

 今更ながらはてなブログなるものを初めて見ました.なんか適当な数学の話が出来たらいいなぁって感じです.よろしくお願いします.そうだブログを書こうと思ったはいいものの,何の話をするかは決めてなかったのですがなんか写像の話がしたくなったので写像の話を気が済むまでしようと思います.

 そもそもこれを読んでいるのがどれくらい数学を知っている人なのかはわかりませんが、写像ってなんだって言われたら大抵次のような感じになります.

Def\(A,\ B\)を集合とする.\(A\)と\(B\)の対応\(f\)が\(A\)から\(B\)への写像(map)であるとは,任意の\(A\)の元\(a\)に対して,\(B\)の元\(b\)がただ一つ決まるような対応のことをいい,このとき\(b\)を\(f(a)\)とかき,\(f\colon A\to B\)で表す.

 

 とまぁなんか堅苦しい感じで書きましたが上の定義実は一個だけごまかしてるところがあって、対応という言葉、これかなりごまかして書いてます.でも気持ちはわかると思うので許してください.本来は\(A\)と\(B\)の直積集合の部分集合を対応と言って、それが一意だ定義域がなんだとかいう条件を満たすと写像になります.(気になった人は今すぐ集合論の本を引っ張り出すか数理図書館へレッツゴー!)

--余談--

 集合という言葉を上で使っているけども、素朴集合論の立場で集合の定義を書いてる本ではよく"一つ一つがきちんと区別できるモノの集まり"的な定義をされてることが多いです.ですが、これはかなり要約されてて集合論を作った超えらい人Cantorさんの定義はめちゃくちゃ長いです.僕は長すぎて忘れました.数理の人なら数理図書館のCantorの論文集をチェックだァ!

--End of 余談--

 さて,何で今更写像の話をするかというと、写像をギリギリ集合とかの話を理解している人にどう説明するのが一番いいんだろうかとふと思ったからです.(写像って案外説明するの難しい、難しくない?)

 しばらく考えてみたのですが、僕だったら出席名簿が一つの例になるんじゃないかなぁって思います.出席名簿っていうのは小中高と毎朝先生が名前呼びながら出席とか欠席とか書くあれです.まぁわざわざそんな身近なものを無理やり結びつける必要もないですが少し数学的な見方をしてみましょう.

 とりあえず最初に集合がないと始まらないので集合を決めましょう.まず,クラスメイトの集合を\(C\)とおきましょう.もちろんドッペルゲンガーとかそういうのがいなければクラスメイト一人一人は区別できますよね.そうすると出席番号\(1\)番は阿部さんとか,出席番号\(15\)番は田口くんとか決まりますよね.でも出席番号\(4\)番は井上二人いるから二人とも\(4\)番とかはないですよね.それぞれ一つの数字に一人の名前を対応させないと不便ですから.だから普通の学校だったらきちんと写像になってるはずです.つまり,出席名簿は番号の集合\(\{1,2,\cdots\}\)から\(C\)の写像になっています.

 なんか自分で書いてみて思ったんですが、この説明わかりづらい気がしますね.いやでもこの例にはもう一ついいことがあって,普通の出席名簿なら全単射になっているんですよ.それを伝えるためにもう一つ定義します.

Def\(A,\ B\)を集合とし,\(f\colon A\to B\)とする.このとき,\(f\)が\(a\neq a'\Rightarrow f(a)\neq f(a')\)満たすとき\(f\)を単射(injective)という.また,\(f\)が任意の\(b\in B\)に対して,\(f(a)=b\)なる\(a\in A\)が存在するとき,\(f\)は全射(surjective)という.特に,\(f\)が全射かつ単射ならば\(f\)は全単射(bijective)であるという.

 

 さて,上の全射とか単射とかなんだか難しそうですが,上で話したようにさっきの例は全単射になっています.それを確認するためにもう少し仮定をおいて,クラスメイトは\(40\)名いるとしましょう.また,当然\(40\)人なのですから,番号は\(40\)で最後です.なので出席名簿\(S\)は\(\{1,2,\cdots,\ 39,\ 40\}\)から\(C\)への写像ということになります.

 また出席名簿は利便性を考慮して違う番号を同じ人に当てるということはしてなかったと思います.少なくとも私の学校ではそうでした.つまり,先生が今日は\(2\)月\(15\)日だから出席番号\(2\)と\(15\)の人といえば違う二人が返事をするわけです.これはつまり単射であることがわかります.そしてクラスメイト一人一人には出席番号\(1\)から\(40\)のどれかの番号が対応しています.でないと出席確認できないですからね.つまりこれは全射ということになります.かくして全単射になるわけですね.

 といった感じで意外と考えてみると写像なんだなぁっていう感じです.こんなふうに写像って結構いろんなところにあるわけですね.それこそ足し算とか掛け算なんかも写像なわけですし.そんな数学にとって当たり前のような概念の写像ですが,こういう写像とかのベーシックな概念は大学数学に慣れるのにとても大事なことなので、暇なときに自分の言葉で整理してみたり,僕みたいにくだらない例でもいいので考えてみたりすると数学のより良い理解につながるかもしれません.

 そんなわけで,最後はなんか説教臭くなりましたが,もう今日は飽きたのでこれで終わります.ありがとうございました.